発団45周年記念「文京第5団 夜話集」
平成19年(2007年)7月


杉田篤司(ボーイ隊)


 私がスカウトだった頃、入団したてのスカウトは水汲み、蒔き拾いと食器洗いしかさせてもらえませんでした。
 冬の凍てつくキャンプ、小さかった身体の半分はあるかと思うバケツを持ち、キャンプサイトの食管を満杯にするまで運んだものです。
 腕が棒になるほど、悲しい思いの中で往復を繰り返しました。
 当時、薪は焚き付け用の限られた束しか配給されなく、また無いときも有りました。
 あとは班で拾い集めなければなりません。
 水と薪は常に一杯にと言うのが班長の指示なのです。
 夕食が終わり就寝までの間にも空いた時間は薪拾いでした。
 サイト付近にはすでに無く、月の光も届かない暗い山の中を捜しました。とても怖い思いをしました。
 キャンプサイトの近くを流れる小川での食器洗いの仕上げ、ポンチョを着ての作業、指が切れるような冷たい水、涙がこぼれたものです。

 あまりにも寒い氷点下の夜、班長が「かまど」のそばに集まるよう指示しました。
 出してくれたのは温かい甘いミルクティでした。
 「杉田達が寒い思いをして洗ってくれた食器、一生懸命集めた薪、努力して汲んだ水だから、君達が最初に飲むんだ。」と言って班長は作ってくれました。
 とても美味しく、何故かジーンとしました。
 かまどの炎に照らされた班長の顔がやさしく見えました。
 (注:リーダーシップ、安全対策、そなえよつねに)