夜話集4 「ある集会での出来事 −私がビーバー隊長だった頃―」
カテゴリー: 文京第5団夜話集
掲載日:2008/11/05
スカウト同士が言い争っているところに出くわした。
一人は涙をぽろぽろこぼしながら泣きじゃくっている。
「どうしたの?」泣いていないほうのスカウトに聞きただすと、彼ではなく泣きじゃくっているスカウトが、嗚咽の合間にとつとつと話し出した。
「A君が僕のお母さんのことを「でべそ」だといって聞かないんだ。僕のお母さんはでべそなんかじゃない」
一瞬笑ってしまいそうになったが、彼にとっては自分のお母さんのことを、からかわれた、ということで一杯になっているのだろう。彼の目を見ながらその気持ちを考えると、なぜだか私まで涙ぐんでしまった。
A君に「冗談にせよ、ひとのお母さんのことを、そんなふうに言うもんじゃない。もし君が同じ事を言われたらどんな気持がするか、よく考えてごらん」
そう言いながらも涙が止まらなかった。A君はどうして私まで泣き出してしまったのか、不思議そうに見つめながらしばらくだまっていたが、そのうちコックリと頷いて、「ごめん、もう言わないよ」と言ってくれた。
「もう二度と人のいやがることを言ってはいけないよ。分かったら握手して、皆のところに戻ろう」と言ったら、A君がさっと手を出して、相手の手をとって、しっかり握手したまま、二人で駆けていった。
それは他から見ればほんの一瞬の出来事だったにちがいないが、二人の気持の葛藤を考えると、私はその場からしばらく動けずに、涙の流れるままに立ち尽くしていた。
一人は涙をぽろぽろこぼしながら泣きじゃくっている。
「どうしたの?」泣いていないほうのスカウトに聞きただすと、彼ではなく泣きじゃくっているスカウトが、嗚咽の合間にとつとつと話し出した。
「A君が僕のお母さんのことを「でべそ」だといって聞かないんだ。僕のお母さんはでべそなんかじゃない」
一瞬笑ってしまいそうになったが、彼にとっては自分のお母さんのことを、からかわれた、ということで一杯になっているのだろう。彼の目を見ながらその気持ちを考えると、なぜだか私まで涙ぐんでしまった。
A君に「冗談にせよ、ひとのお母さんのことを、そんなふうに言うもんじゃない。もし君が同じ事を言われたらどんな気持がするか、よく考えてごらん」
そう言いながらも涙が止まらなかった。A君はどうして私まで泣き出してしまったのか、不思議そうに見つめながらしばらくだまっていたが、そのうちコックリと頷いて、「ごめん、もう言わないよ」と言ってくれた。
「もう二度と人のいやがることを言ってはいけないよ。分かったら握手して、皆のところに戻ろう」と言ったら、A君がさっと手を出して、相手の手をとって、しっかり握手したまま、二人で駆けていった。
それは他から見ればほんの一瞬の出来事だったにちがいないが、二人の気持の葛藤を考えると、私はその場からしばらく動けずに、涙の流れるままに立ち尽くしていた。
夏目 潔(元BVS隊長)
ボーイスカウト東京文京第5団