東京ディズニーランド・ワールドバザールにあるレストランで実際にあったお話です。

 二人連れの若いご夫婦がレストラン「イーストサイド・カフェ」に食事に行きました。
ウェイトレスが2人を二人がけのテーブルに案内してメニューを渡しました。
2人はそれぞれAセット一つとBセット一つ注文しました。
オーダーし終わったとき、奥様が追加注文しました。「お子様ランチをひとつ下さい」と・・・

 ウェイトレスは「お客様、誠に申し訳ございませんがお子様ランチは小学生のお子様までと決まっておりますので、ご注文は頂けないのですが・・・」と丁寧に断りました。

 すると二人は顔を見合わせて複雑な残念そうな表情を浮かべました。
 その表情を見てとったウェイトレスは「何か他のものではいかがでしょうか?」と聞きました。
 すると、二人はしばらく顔を見合わせ沈黙した後、奥様が話出しました。

 「実は今日は昨年亡くなった娘の誕生日だったのです。私の身体が弱かったせいで、娘は最初の誕生日を迎えることも出来ませんでした。子供がおなかの中にいる時に主人と3人でこのレストランでお子様ランチを食べようねって言っていたんですが、それも果たせませんでした。
子供を亡くしてから、しばらくは何もする気力もなく、最近やっとおちついて、亡き娘にディズニィーランドを見せて三人で食事をしようと思ったものですから・・・」

 その言葉を聞いたウェイトレスは2人を四人がけのテーブルに案内しました。
仲間に相談して全員の賛成を得て、お子様ランチのオーダーを受けました。
そして小さな子供用の椅子を持ってきて「お子様の椅子はお父様とお母様の間でよろしいでしょうか?」と椅子をセットしました。
その数分後・・・「お客様、大変お待たせしました。ご注文のお子様ランチをお持ちしました」と
テーブルにお子様ランチを置いて笑顔で言いました。「どうぞ、ご家族でごゆっくりお楽しみください」

 数日後、若いご夫婦から感謝の手紙が届きました。
「お子様ランチを食べながら涙が止まりませんでした。こんな体験をさせていただくとは夢にも思いませんでした。これからは涙を拭いて生きて行きます。また行きます。今度はこの子の弟か妹を連れて・・・」

 このお話をスカウトのみんなはどの様に感じますか?
またお父さん・お母さんでもあるリーダーの皆さんはどの様に感じますか?
人は思い出にすがってばかりでは生きていけません。
でも人はそれぞれ良い思い出も悪い思い出もあります。
良い思い出も悪い思い出も心の中の引き出しにそっと仕舞っておいてください。
そしてこのウェイトレスさんの様に思いやりのある大人になってください。
おわります。

輿石 修(元BVS隊長)

ボーイスカウト東京文京第5団